センター長 挨拶

大阪大学大学院医学系研究科
附属未来医療イメージングセンター センター長 富山 憲幸

富山 憲幸

 1990年、大阪大学医学部の吹田地区への移転を契機に、医学・生物学研究に放射性同位元素を用いる際の実験施設として大阪大学大学院医学系研究科に放射性同位元素等使用施設が設置されました。2010年、サイクロトロン、放射性医薬品標識合成設備、動物用PETカメラが導入され、医学系研究科附属PET分子イメージングセンターの共同利用が始まりました。今回、放射性同位元素等使用施設とPET分子イメージングセンターを統合して運営し、さらに多くの研究者に広く利用していただけるよう、医学系研究科附属未来医療イメージングセンターが誕生しました。基盤研究部門、PET分子イメージング部門、管理部門があります。

 この施設は、国内研究教育機関では唯一、信頼性基準に基づいた運営を維持しており、疾患モデル動物、遺伝子改変動物の分子レベルの病態研究に利用されています。大阪大学だけではなく、他学(東大、東工大、名大、九大、筑波大、神戸大など)、国外研究機関(上海交通大学、チュビンゲン大学など)の研究者が利用しています。これまで、心筋シートの効果を分子レベルで検証しました。新規抗がん剤の効果を検証する分子プローブが開発されています。企業による創薬のための前臨床試験が数多く行われています。

 “原子のエネルギーを医療へ”をスローガンに、国際原子力機関(International Atomic Energy Agency: IAEA)は放射性核種の医学利用を推進しています。大阪大学大学院医学系研究科は、そのための教育研修拠点校に選ばれ、未来医療イメージングセンターと医学部附属病院の施設を基盤に、IAEAとの協定に基づいて世界各国の若手研究者を受け入れています。

 放射性同位元素の利用は、原子核物理、放射化学、放射性医薬品薬学、医用工学、情報科学、コンピュータ科学、医学・生物学、疫学、環境科学などが協働する総合科学の分野です。大阪大学の特徴を生かした学際分野の発展の一助となることを願っています。

2018年4月1日 センター長 富山 憲幸